テニス歴20年、パドルを握って愕然とした話
学生時代からテニスに明け暮れ、社会人になってからも週末はコートに通う。そんな私が、ひょんなことからピックルボールに出会ったときのことです。「テニスができるんだから、この小さなコートで負けるはずがない」。そんな自信は、わずか5分で木っ端微塵に砕け散りました。
テニス経験者がピックルボールに転向した際、必ずと言っていいほどぶつかる「壁」があります。今回は、私自身の失敗談を交えつつ、その壁をどう乗り越えるべきかをお話しします。
最大の壁:パワーを封印する「ブレーキ」の難しさ
テニス経験者の最大の強みであり、最大の弱点となるのが「スイングの大きさ」です。テニスのストロークは大きなテイクバックから振り抜くのが基本ですが、ピックルボールのコートはテニスよりもずっと小さく、しかもネット際に「キッチン(非ボレーゾーン)」という聖域があります。
テニスの感覚でフルスイングをすると、ボールは面白いほど簡単にオーバーします。また、ピックルボールのボールはプラスチック製で弾みが特殊です。テニスのトップスピンスピンをかけようと強く擦れば、ボールはあらぬ方向へ飛んでいく。この「振り切れないもどかしさ」が、多くの経験者が最初に感じる壁ではないでしょうか。
克服のヒント:スイングを「コンパクト」にリセットする
この壁を乗り越えるために私が意識したのは、以下の3点です。
- テイクバックを極限まで小さくする(パドルを体の前で維持する)
- 振り抜くのではなく、ボールを「運ぶ」感覚を持つ
- 回転をかけることよりも、まずはネットの真ん中を狙う
特に意識したのは「パドルを常に体の前(パワーポケット)に置いておくこと」です。テニスのような大きなテイクバックを捨て、ブロックするようなイメージでボールを弾くことに集中してみてください。
ダブルバウンスルールがもたらす「忍耐」
もう一つの壁が、「ダブルバウンスルール(サーブ後とリターン後は一度バウンドさせるルール)」です。テニスだとサーブ&ボレーが得意なタイプほど、ついネットにダッシュしたくなります。しかし、ピックルボールではそれが命取りになります。
せっかちな私は、最初のリターンを打った直後に無意識でネットへ詰めてしまい、相手の深い返球に足元をすくわれてばかりでした。この競技は「いかに早くネットへ行くか」の競争ではなく、「いかに焦らず適切なタイミングでネットへ詰めるか」というゲームなのです。
「テニスを捨てる」勇気を持つ
正直に告白すると、完全にテニスの癖を抜くには時間がかかりました。しかし、ある時「これはテニスとは別の、チェスのような頭脳戦なんだ」と割り切った瞬間に、急激に楽しくなりました。フルスイングを封印し、あえて緩い球を打って相手のミスを誘う。そんな駆け引きの面白さに気づいてからは、ピックルボールの奥深さにどっぷりとハマっています。
もし今、テニス経験者で伸び悩んでいる方がいたら、一度だけ「自分はテニスが上手い」というプライドをコートの外に置いてきてください。パドルを短く持ち、ボールをコントロールすることだけに集中してみる。そこから、あなたの新しいピックルボールライフが始まりますよ。
